はみ出るフィーリング

〜感受性のキャパからのはみ出し編〜

上司の仕事が終わってなくても僕が颯爽と帰る理由 永井孝尚著『「あなた」という商品を高く売る方法』を読んで

こんばんは、揚げなす大好きもりたです。
ブラックの中のブラック、エリートブラック企業勤務の25歳です。

今回は僕の常日頃の疑問がテーマです。

自分の仕事が終わってるのに、雰囲気的に帰り辛い…

今流行りの「働き方改革」ですが、先日こんな記事を見つけました。

news.careerconnection.jp

サビ残する理由の1位が「して当たり前な雰囲気があるから」

日本の多くの企業に強ーく根付いた意識ですね。
電通の事件が起きて以来残業をなくす方向で動いてる企業が多いとはいえ、そう簡単になくなる風潮ではないでしょう。

特に僕の会社はエリートブラック。上司達はちょっとやそっとの時代の潮流に流される様な、和なPハラ上司ではございません!

彼らの口癖は「残業するヤツが偉い」「頑張ってる姿勢を見せるのが大事」「20代はジャンジャン残業するんだぞ」です。実話ですよ?この2017年に。
ファーーーwww

そりゃね、本当に納期に間に合わなそうだったり、やらなくちゃいけないことがある時は僕だって何時まででも残りますよ。
資料作りが全然終わらなくて会社で徹夜したこともあります。

しかしね、自分の仕事が終わっているにもかかわらず、帰れない。帰りにくい。
これいかに。

僕の会社ではいつも定時の時間帯になると負のオーラでオフィスが満たされ始め、次第に人々の目が赤く染まり、時空が歪み始めます。実話ですよ?

充満する嫌な雰囲気、張り詰める空気、それらを生み出す「上司より先に帰ってはならない」と言う暗黙のしきたり。

え、なんで?なんでやること終わってんのに先に帰っちゃいけないの?
…と意義を唱えられたら最高なんですけどね。

唱えたところでもうそこかしから「ゆとり乙」「これだからゆとりは」「お前みたいなやつのせいで若い世代全体が笑われる」「フナムシ野郎」と袋叩きにされそうですが、ご安心ください。
実際は「お先に失礼しまーす」と蚊が鳴くような声を出してそそくさとオフィスを後にしてます。
抗えぬミエナイチカラ、「同調圧力」に押しつぶされるかどうかのギリギリのラインで職場からこそこそと抜け出すのです。
哀しいかな、これが現実です。

ところでこの暗黙のしきたりですが、何か具体的に守らなければいけない理由はあるのでしょうか。
「それが常識だから」とか抽象的なものではなく、その暗黙ルールを守ることによってもたらされるメリットが知りたいなと純粋に思いました。

ということで、一度冷静になってどうしてこの意識が深く根付いているのかを調べてみようと思います。

今回参考にした本は永井孝尚著『「あなた」という商品を高く売る方法』です。

こっから本題!

高度経済成長期は「やればやるだけ伸びる」市場

永井孝尚さんは『100円のコーラを1000円で売る方法』でベストセラーになられたお方です。
僕の様なド素人にも分かりやすくマーケティングの仕組みや考え方が書かれてます。超オススメです。

『「あなた」という商品を高く売る方法』は、マーケティングの観点から自分の市場価値を上げていく方法について書かれた本ですが、その中で高度経済成長期と現代の市場の違いについて詳しく述べられています。

時代背景が違うにもかかわらず、今でも高度経済成長期のやり方から抜けられず疲弊していく会社が多い。
ということですが、この「高度経済成長期の名残」こそが、あの帰り辛い雰囲気を生み出している元凶です。

もしブラック企業にお勤めの方が、万が一いらっしゃればご自身の職場を思い浮かべて欲しいのですが、上司よりも先に帰ることに関して寛容じゃない人って特に40〜50代前後の人に多くないですか?
僕の自慢のエリートPハラ上司も50代です。

現在の50代が新卒入社した1980年代は、高度経済成長期の絶頂期です。
この頃は大量生産の大量販売時代で、とりあえず作れば売れる。
この大量生産を効率良く行なうために、企業が社員に求めたのは隊列を乱さない優秀な兵士であることでした。

おまけにどの企業も社員を生涯雇用することを前提としていたので、誰もが社内での出世を目指してたそうな。

「和を乱さず上の指示に従順であることが求められる」
「社内での人間関係が一生に関わってくる」
このような環境で評価されるのは、「頑張っている姿勢」です。

その当時は市場が成長中だったので、ひたすらガムシャラに頑張ればその分それなりに成果が付いてきた時代。
だから当時の上司も当然、遅くまで残っている部下を頑張っている=成果を出しているとして評価したのでしょう。

しかし、30年経った今、市場は縮小しています。
この市場でガムシャラに競争をしたとしても、仕事量に対して得られるものは少なく、只々人は消耗してしまうばかりです。

にも関わらず、当時の成功体験が忘れられない団塊&団塊ジュニア世代パイセン達は、「そんなのは甘ったれた言い訳だ!」と時代錯誤なやり方を若手に押し付けているわけです。

つまり自分の価値観を正当化するために無意味な残業強いてるわけですね。

え、そんなしょうもない理由!?

(ちなみに上記の縮小傾向の市場では、「競争せずに勝つ力」こそ真に意味を持つとのことです。
その力をどうやって身につけていくかまで触れると今回のテーマとずれてしまうんで、気になる方は『「あなた」という商品を高く売る方法』是非読んでみてください笑)

俺も苦労したんだ。お前も苦労しろ。という負の連鎖。

定時になると時空を歪ませるほどに満ち足りるあの空気の正体は、形骸化した高度経済成長期の風習でした。

正直、「電車の中で化粧をしてはいけない」と同レベルの風習だと思います。
満員電車でもない限り他人に直接害が及ぶようなものでもないですが、「電車の中で化粧=不快」という意識がいつの間にやら多くの人に擦り込まれためマナー違反とされています。

気づいてないだけで、特に意味は無いのに知らぬ間に意識に擦り込まれた価値観って以外と多いように思います。

それはこれまで所属してきた組織が創り出したものかもしれないし、テレビやメディアによって作り上げられたものかもしれません。

こういう価値観を共有し合うことで人は仲間意識や組織への帰属意識を感じることができるので、明らかに合理的ではないようなルールでも、中々それに意を唱えることって難しいように思います。

特に日本は調和を重視するし、仕事場以外で繋がりを感じにくい社会構造なので尚更です。

それに加えて、自分の人生をどうしても正当化させたい、人間の悲しいサガ。

特に理由がなくても残業を強いるのは、「俺も苦労したのだからお前たち(下の世代)も苦労をしないと不公平だ」という気持ちが少なからずあるように感じます。

つまり今ある常識を疑って、負の連鎖を断ち切ろうという強い気概を多くの人が持たない限り、このスパイラルは永遠に続きます。

下の世代に無理強いをしないためにも、「もう帰んのかよ」的雰囲気に負けずに、仕事が終わったらスタイリッシュに帰ることこそが日本の将来のためになるのではないでしょうか。

なので僕は明日定時に上がり、脇目も振らずまっすぐ帰宅し、アマゾンプライムビデオでM−1グランプリ2016準決勝の続きを見漁るという使命を果たさねばならないのでした。

もりた

鎌倉を舞台に家族の繊細な繋がりを描く 海街diary

f:id:agenasutabetai:20170910190651j:plain

あらすじ3行

  • 鎌倉で暮らす三姉妹のもとに、15年前に出て行った父の訃報が届く
  • 父の葬儀で出会った腹違いの妹・すず(広瀬すず)を引き取ることに
  • ある日三姉妹の母が現れ、すずは自分がここにいていい存在なのか悩み始める

 

是枝監督作品だから為せる絶妙なキャスティング

広瀬すず夏帆長澤まさみ綾瀬はるか…人気女優がこれでもかと名を連ねるこの作品。

 

「人気漫画に人気俳優起用してとりあえず映画化しとけ!」
みたいな乱暴な作品が溢れる昨今の邦画シーンのせいで、こういったキャスティングにアレルギーを持つ人もいるかもしれない。


しかし流石は是枝監督作品、一時の話題作りの為に撮られたような作品とは格が違う。

 

俳優一人一人が出す味・臭いを熟知し的確に配役をしているからこそ、複雑な人間関係をテーマとしながらも温もりを感じる、繊細なヒューマンドラマを完成させている。

 狂気すら感じる大竹しのぶの演技

f:id:agenasutabetai:20170911014209j:plain
実力派揃いの俳優陣だが、一際異彩を放っているのが三姉妹の母を演じた大竹しのぶ
言うまでもなく大女優だが、圧倒的存在感を放つ演技力に改めて驚かされる。
 
元夫との離婚で空いた心の穴を埋めることが出来ず、後ろめたさから娘達への接し方も分からずにいる。奔放でありながらも影がある女性の役を見事に演じている。
その役柄への入り込み方は狂気すら感じるほどで、演技というより役柄を憑依させている、と言った方が近いように思えた。

ミクロな視点で描かれる鎌倉の魅力

f:id:agenasutabetai:20170911014403j:plain

この作品の魅力を名俳優の演技だけだと思うことなかれ。

 

多くの人に「観光地」として親しまれる鎌倉を生活の舞台として描き出しているので、いつもと違う表情の街並みを楽しむことができる。

 
実際に暮らす人々のミクロな視点で描かれる景色は繊細で美しく、一つ一つのカットに鎌倉の魅力が凝縮されている。
 
姉妹が住んでいる古民家、江ノ電極楽寺駅由比ヶ浜の海岸沿い
 
どれも自然と生活の調和が鮮やかであり、ノスタルジックな雰囲気が人々の心をつかんで離さない。
 

f:id:agenasutabetai:20170911013848j:plain

心の奥底に根付く感覚を呼び覚ましてくれる作品

古き良き日本の情景、そして人の繋がりの繊細さを描いたこの作品は、効率や生産性を追い求めることよりも大切なことがあると改めて気づかせてくれる。
  
お金や物資の豊かさ以上に人や自然との繋がりを大事にしたくなるのは、後者の方が人間の本能的な感覚として心の奥底に根付いてるからだろうか。